未来汁をすする

このところノンアルコールビールが密かなマイブームというコトになっている。

 

もともとあんまりビールを飲まない。

一人でいるときは基本的に酒を飲まない。

飲み会などではそれなりに飲むし、特段アルコールに弱いわけでもないが、飲まない。

 

お酒は飲むのにエネルギーが要る。

一口飲む前に、必ず自分に内心で声掛けしないと飲めない。

(さあ飲むぞ)とか(よーし飲むぞ)とか。

味は好きなんだけど、一人で飲むときにいちいち気合を入れるかというと、そこまでの気力はない。

だから飲まない。

でも餃子を作ったりとんかつを揚げた夜などには、飲まないわけにはいかなくなる。

どうしようもなくそこにはビールが必要になるのだ。

面倒だけど気合を入れて、声掛けして飲まなければならない。

なんとかならないかな、とずっと思っていた。

 

ノンアルコールビールの存在を思い出したのは、つい最近になってのことだ。

そういえばこんなのもあったなと試しに飲んでいたら、コレがかなりイイ。

声掛けが要らない。何も言わなくても抵抗なくすっすっ と飲める。

そして餃子に合う。とんかつに合う。濃い目の味のものにはだいたいマッチする。

ステキだ。

そんなわけで数か月前から、週2,3回のペースで食事に取り入れるようになった。

このところはさらに進展している。今まではおかずドリブンでノンアルコールビールを飲むか飲まないかを決定していたのが、ノンアルコールビールに合うおかずを作ろうとか考えるほどにまでなっている。

 

さんざんややこしいことを書いたが、たぶん僕は食事の供として、甘くなくてアルコールの入っていない飲み物が欲しかったんだと思う。

「お茶があるだろ」

と言われそうだ。

確かにお茶もある。水もある。炭酸水なんてのもある。あとコーヒー。

でも他にはどうですか?あんまり思いつかないんじゃないですか?

これがお酒の話だったら、呼んでもないのに四方から人が集まって来て、「紹興酒がウマい」とか「時代はマッコリ」とかおのおの自由に語り始めるに違いない。

だが非甘・酒飲料の話をしてもさほど盛りあがらないのが現状だ。

もしかすると我々が思っているほど、飲み物の世界は広くないのではないか。

そういう指摘を僕はしておきたいのです。

 

スーパーの飲み物コーナーに行くと、そのほとんどが甘いジュースかアルコール飲料で占められていることに、いまさらながら驚く。

もちろんお茶も水も炭酸水もコーヒーもあるけど、非甘・酒飲料の種類は少ないし、なにより新人が少ない。

お酒とジュースのラインナップはここ数年でもそこそこ入れ替わっているように思うのに、それ以外のメンツはあまりにも旧態依然としていないか。

ベテランの安定感に頼りすぎてはいないか。

チャレンジ精神が足りないんじゃないか。

 

その停滞した状況を打ち破らんとしているのが、ノンアルコール飲料なのだと思う。

まだまだ種類は少ないが、ノンアルコールハイボールとかノンアルコールワイン、ノンアルコールジントニックなどもあり、数年前と比べても着実に種類は増えているように思う。

いいぞ。

飲料メーカーさま各位にあたっては、今後も奮って新製品を開発してもらいたい。

あと、これだけノンアルコール飲料というジャンルが定着したのだから、べつにもうノンアルにはこだわらなくてもイイと思う。

飯に合うウマい飲み物、ということで考えてみるのがイイんじゃないか。

ギョーザに合うドリンク、ラーメンに合う液体、お好み焼きに合う汁。和食全般に合うリキッド。

どんな味なのかそれはまだわからない。色もフレーバーもこれから決まる。

そういうモノを作って欲しい。いち消費者として僕は待っている。

 

いつの日か、ジュースでもノンアルコールでもお茶でも水でもなくて、今の時代の人ではとうてい名状できないような不思議な飲み物が売り出されて市民権を得て、ビールとかジュースとかと肩を並べるようになってほしい。

そんな未来の謎の飲料を飲みながら、とんかつを食べたりギョーザを食べたりしたい。

あるいは謎汁をちびちび飲みつつ、友達と語り明かすこともあるかもしれない。

それも悪くない。

 

そういう時代が来るのを待っている。

ずっと夢に見ている。