文学フリマ東京41に出店してきました。
前回の初出店(今年1月の京都のやつ)に続き、二度目の参加でした。
(前回の記事⇧)
今回持って行った作品は四つ。
自宅のレーザープリンターでA4のコピー用紙に出力したものを二つ折りして丁寧にホチ止めし、同じくA4のコピー用紙に出力したキャッチコピーを添えて陳列した。

「これはひどい」「売る気もやる気もないじゃない」「文フリをなめるな」
五分もかからずにブースのセッティングを終えた時、そんな声が自分の脳内からあふれ出し、鼓膜を内側からズンズン揺らす。
「気取らずに気楽に出店しよう」などと考えての結果だったのだが、さすがにコレはちょっとアレだったか。
周りのブースはカラフルな敷布やポップ、立て看板、ポスターで彩られ、ナイスで素敵なのぼりまで掲げられているところも。対する我がブースは色彩ゼロ、立体感ゼロ。
来る前からわかってはいたが、鮮やかな現実を目の当たりにして私は心の底から思う。
「マジですいません…」
同時に焦りが胃の底からせり上がる。
「これで一冊も売れなかったら完全にヤバいヤツじゃん」
やがて12時になる。
「開場です」
東京ビッグサイト、南ホールに流れるアナウンス。そして始まる文学フリマ。
ゆるやかにしかし着実に、会場に流れ込むお客さまたち。時代のうねり、人の波。
お客として来場したことは一度もなく、出店者として参加したのも二度目、しかも東京は初出店という文学フリマど素人ではあるが、いちおう私なりに当日の場の流れについて推測したことを書きたい。
まず、開場すぐにやって来るお客さんたちというのは、事前にSNSなりカタログなりで出店者情報をチェックし、「売り切れる前にこの人の本を買いたい!」と急いでくる熱心な方々だと思われる。
そういう人はまっしぐらにお目当てのブースに向かうので、私のような無名のブースは一顧だにされない。
つまり開場後一時間半くらいは、私のブースには誰も来ない。足も止めない。
わかっちゃいるけどこれがキツイ。
焦りと不安しかない。仕方ないので本を読む。
今回の相棒は町田康が訳した『宇治拾遺物語』で、これがめちゃくちゃ面白い。短くまとまったいにしえの小話が、町田康の小気味よい文体でテンポよく蘇る。
読みながら思わず笑う。たまに目を上げてブース前を見る。誰もいない。また本を読む。笑う。目を上げる。誰もいない。本を読む。笑う。目線だけ上げてすぐ下げる。
その繰り返し。
救いは突然やってくる。
それは開場から二時間ほど経った頃で、ふと目を上げるとお客さんが本を手に取り読んでいる。
「ええすごい。なにこれ面白い」
そう言いながら彼がページをめくるのは、『佐藤はたたけば増える』。
「えっ。ありがとうございます」
思わず大感謝。読みかけの本を閉じて脇に置き、立ち読みのリアクションを観察する。救いは続けてやってくる。
「タイトルがすごいですよね」
そう言って後ろからもう一人のお客さんがやってきた。『プレイバックじいちゃん』に目を止めてくれたらしい。
「いやホントに」「ふふふ」
「これとこれください」「あ、私も」
かくして本が売れる。
私はヤバいヤツではなくなる。
気が付くと会場の流れがすっかり変わっている。
ホールはすっかり賑わって、ブース前の通路をゆるやかに人が行き来する。
そう、私のような出店者的には、ここからが本番なのである。
「お目当てのブースは見たし、他のとこもフラっと見ていくか…」
そんな素晴らしいお客さんたちが、ブースの前を次々と通っていくわけである。
期待半分にうつろう人々の視線をどうやって捉えるか。
――タイトルとキャッチコピーしかないでしょう。
実はそれこそが私の作戦であった。

デザインセンスもないし美麗な絵も描けないし振りまく愛想もないので、とにかくタイトルとキャッチコピーだけをハッキリと明示して勝負する。
もう少し他にやりようはあったかもしれないが、少しずつお客さんが目を止めてくれるようになる。
ゆるやかに本が売れてくる。
もちろん盛況には程遠い。しかしまばらではあるが確かに私とお客さんとのコミュニケーションは成立しており、タイトルを見て「へえ」と思った方は足を止めてくれる。
これが嬉しい。
書きながら「これおもしろいよな…」と思ったものに、「あ、おもしろい」と共感してもらえる。
「タイトルがいい。中身が気になるよ。才能あるね」
「書き出しにやられました(笑)」
「何これめっちゃ笑った」
ありがたい言葉の数々に、ゆるりと心があたたまる。
不安が自信に形を変えて、地盤沈下が盛り上がる。
そうなんですよ私もそれおもしろいと思って書いたんです。
意図を汲み取ってくれてマジ感謝です。
あらためてご来店いただいた方々、本当にありがとうございました。
今後もがんばって書きます。
次回は年明け、1月18日開催の京都に出店します。
また、5月4日の東京にも出店します。
新刊書きますので、またのご来店お待ちしております!
文学フリマ東京、無事終わりました。
— 0輪駆動 (@0wdsts) 2025年11月23日
ご来店&ご購入いただいた方、本当にありがとうございました!
お褒めの言葉を頂いたこと、書き出しを読んで笑ってもらえたこと、すべて本当に嬉しいです。
次回は来年1月の京都に出店予定です。張り切って新作書きます。
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悲しいくらいSNSに疎いのでまったく活用できていないXのアカウントがあるのですが、よかったらフォローお願いします…。